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帰りのホームルームで、朝、車にはねられ彼が亡くなったと先生が言っていた。連絡がつかなかったので、どうしてかと思っていたら、そんな理由だったことにとても驚いて震えた。
「私、待つよ。いつまでも待つから、このバスじゃないのに、乗ろうよ」
だけど、彼はまた困ったように笑うだけだった。
彼の持っていた傘が明るく白く光る。どうしてか透けていて、差し出すと私の傘と重なり合った。私と彼に光が差し、広がる。
「目を閉じて、呼吸に耳を傾けて」
そっと目をつむった。胸の中に悲しみがあって、憎しみがあって、どうして彼がという思いが土砂崩れみたいに溢れ出してきた。
だけど、それが、粒になっていくのがわかる。水が蒸発して空へ帰って行くようになくなっていくと、少しずつ自分の中が明るくなっていった。
「ありがとう」
彼の声が聞こえて、私は目を開けた。
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