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ご飯かぁ…
そうだよね。
二人で定食屋さんには行ったりしたけれどリハビリするって話をしてからはどこにも行ってないもんね。
あまり気が進まないけど課長なりに気を使ってくれてるわけだし…
何より私自身、いつまでもトラウマに縛り付けられたくない。
「諸々、了解しました。」
そう言うと、課長は一瞬、驚いた顔したかと思うとニカッと笑った。
「っ…」
ふ、不意打ちだな…
さっき出掛ける時もそうだけど、課長の笑顔は普段の様子からはかけ離れていてまるで少年の様に笑う。
その笑顔に正直、戸惑っている。
なんでだ?
いやいや、深読みはやめよう。
普段、飄々としてやる気があるのかないのかわからない課長の笑顔だもん。
誰が見てもギャップに惑わされるわ。
自己完結して、席に戻ってくると、
「見ましたよ。」
また飯山くん。
「な、なにを?」
平静を装いつつ、手元の資料の付箋を見られやしないかとさっと伏せる。
「課長、箕輪さんにはあんな笑顔見せるんですね。」
「えっ!」
「だから、僕は見たことないです。課長のさっきの笑顔。やっぱりお二人が付き合ってるのって本当なんですね…」
わざとらしく隣のデスクで落ち込んだふりする飯山くん。
「えっと…そ、そうかな?私はよくわからないな。」
「そうですよ。僕なんかが課長に相談事しても面倒臭そうな顔しかしませんよ。」
その相談、実際、面倒なんじゃないの?
と、心の中で呟く。
「ほら、そんなことより、早く用意して行かないと。浅井様、時間に厳しいでしょ。」
「やばっ、ほんとだ。もうこんな時間じゃん。じゃあ、行ってきますっ。」
「嵐がさったみたい…さてと、」
賑やかな飯山くんがいない間に仕事どんどん片付けよう。
その言葉は心の中で呟いた。
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