都倉真咲(3)

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 夕食を食べながら、テーブルに新聞を広げ、音楽番組で流行りのアーティストをチェックする。中学生に相対するうえで、彼らの流行を掴むことは不可欠なのだ。会話の糸口にもなる。月九は勿論のこと、夜十時からのドラマも概要だけは押さえるようにしている。  漫画も、本当は読みたいのだけれど……。  部屋には、心理学の蔵書がいっぱいで、スペースが厳しい。それでも、……物置の不要なものを処分すれば、いけるか。でも。  大きな荷物いっぱいで桜井家にお嫁に行くなんて……。  いやいや。結婚もまだっていうのに、なにを考えているんだ私は……。  海老しんじょうを口に放り込み、じっくりと咀嚼。テイスティングに集中する。ぷりっぷりのえびの旨味が口のなかにじわっと広がる。うっすらついた衣の揚げ度合いも絶妙。熱々で「はふ」と声すら出てしまう。  私は麦茶のグラスを手に取る。  そりゃあ、いずれは、……和貴とは一緒になりたいと思うけど。  大好きだけれど。でも、……和貴の気持ちも、大切でしょ。  彼が意識していないのに、無理に意識させるなんて、……変だし。
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