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「そういえば結月は電車通学になったんだっけ」
「ああ、そうそう」
結月はこくこくと頷く。周囲の人波に従って歩いていけば、そのうち1年の行くべき場所には行けるだろう。二人してそんな感じだった。案内なんて見ちゃいない。
「お父さんが結局単身赴任長いからさ。お母さん、本格的にお父さんのフォローするんだって」
「去年、結月のお父さんギックリ腰やっちゃったんだっけ」
「そうそう。お父さんやっちゃってねー」
結月はやれやれと溜息をついた。
良く知っていることだけれども、この友達は、両親がたびたび家を外していた―――というか、お父さんが単身赴任で、お母さんがたびたびそのフォローで家を外していたのだ。
お父さんは能力はあるけど決して身体が強くないらしい。
受験の中で、年下の弟を抱えながら、『お姉ちゃん』は頑張っていたのを私は良く知っている。
塾に行きながら、弟の面倒を見て、―――正直負担はハンパじゃなかっただろうと思っていた。
自分だって大変なのに―――でも愚痴をこぼさないで。
でも愚痴が無い訳じゃないだろう。
周りは部活や遊びに放課後を割く中で、結月にはそれがなかったのだ。
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