0.とあるお昼での会話

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「そんなこと…取り合いになるわよ…。ただでさえ人手不足で複数の仕事ができる美桜は貴重なのに。」 「一昨年人事部長の専属をやったきりだもん。」 「その時の完璧なサポートが今に至るでしょ?それは誇ってもいいことよ?」 「うーん。それでも…一度でいいから一人の人を全力で支えてみたい。」 巴を見てるとさらに思う。巴は経理課長の専属秘書で、金融資産の運用責任者もしているから外出することが多い。 その度に彼女も外出することになるから、ヘトヘトになっているところもよく見る。 よく大変だと聞かされるけど、私にとっては羨ましい限り。 だってすごく充実しているもの。 「美桜それって…。」 「うん?何?」 「いや、美桜って恋人に尽くしそうだね。」 ……………うん? 恋人? 「どうしていきなり恋バナになるのよ?」 「なんとなく。で、どうなの?」 「別にそんなことない。だいたい恋人いないし。それこそ社会人になってから仕事に夢中になったことが原因で別れたし。」 「うわぁ、今の話。男どもが聞いたら食いつきそう。」 「どうかな。3年はいないし、誰からもアプローチとかもないし。」 「高嶺の花だからねぇ。あんた、顔も可愛いし性格もいいし。仕事バカなだけで。」 高嶺の花って便利な言葉だと思う。 確かに身分が違ったり、相手がいる人に対してなら分からなくもないけれど。 私の場合、ただの社会人で一般人。 誰かと付き合ってもない。 それなのに高嶺の花という一言で自分がアプローチしない言い訳にしているし、果たしてそれで好きだと言えるのかな。 私だったら、何が何でも関わり続けるのに。 「今は仕事で手一杯。それより巴はどうなの?秋くんとの新婚生活。」 「もぅ、うまいこと逸らして。」 私のそういう関係がない話を聞くより、新婚したての夫婦の話を聞いた方がよっぽどいいでしょ。 巴は26歳の人妻だったり。 相手の空木秋と巴は大学から付き合うようになったらしく、去年結婚したばかり。 私もよく巴とご飯に行くからそのときに会ってるし、なんなら新居にも招待してくれた。とても優しくて人がいい男性だった。
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