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「ほら、おいで」
「うん……」
あたしに手を伸ばしてくるRYUくんの手を握る。
彼氏なんていたことないけど、もしいたらこんな感じなのかな。
この手から暖かいものが感じられてとくんとくんと胸が高鳴る。
「撮影中は別に何話しててもいいんだよ。ほら、普通の恋人だって普通に話すでしょ?そういう普通が欲しいの」
「あ、そうなんだ。RYUくんは、こうして相手役の子にいつもしてあげてるの?」
「うーん、そんなしないよ」
「え?」
「だってみんな俺より歴長いのばかりだし慣れてるから。俺がついていくので精一杯だもん」
「……そっか」
今回はあたしがまるで新人のようなものだから、あたしにすごく優しくしてくれてるんだと思ったらなんだか胸がチクッとなる。
「でも、だからってみんなのこと笑顔にしたいとかおもわないよ」
「……え?あ、そっか。そうだよね」
「ん?」
「ううん。なんでもない」
あたしが笑わないから、RYUくんは気を使ってくれてるんだ。
行き当たりばったりの撮影に迷惑かけたくないし、少しでも完璧にしなきゃ。
「紗羅ちゃん、ちょっと笑顔がかたいかな?さっきまでの笑顔ちょーだい」
「は、はい」
完璧にしなきゃと思えば思うほど、ダメになっていく気がする。
「紗羅ちゃん、こっち向いて」
もうダメだ、やめようと思った瞬間RYUくんの方を向かされる。
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