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走馬灯なんて嘘っぱちだ。
目の前に死の影が現れたっていうのに、何かを思い出すどころか時間がほとんど止まったようにゆっくりで、すごくもどかしい。
まあいいや、おれがどんなやつだったか聞いてくれ。最後だからな。
おれは至って平凡な家庭に生まれて、のんびりした両親にのんびりと育てられた。
人生においても挫折するほど何かにのめり込んだこともなければ、悔やむほどの出来事も無いと思う。
高校受験は偏差値が並程度のところを受けて合格。大学受験もそのときの成績に合わせた場所を選んだ。
就職先も実家から通える場所を選んだし、給料は世間の中央値前後だ。
どうだ? びっくりするほどつまらない人生だろう?
でも、おれはそんな人生に満足していた。
だってここまで平凡な人生を送れることは、ある意味大きな才能だったと思うから。
ある日、なんとなく付き合いが続いていた友人の1人から占いに誘われた。
なんでも非常に当たる占い師なんだとか。
よくある売り文句を聞いて、冷やかしのつもりでついていくことにした。
だがいざ着いてみると、友人が占ってもらうはずがなぜか占い師たっての頼みでおれが見られることになっていた。
「あなたは数日のうちに、この世の誰もが経験したことのないような、いや、今生きている命も、これから生まれいずる命すべてが経験することのないできごとに遭遇します」
「はあ、そうですか」
適当なことを言ってるなって思ったが、これか。
そりゃあ、誰も経験しないだろうな。どんな確率だよ。そうか、天文学的確率だよな。
小さな小さな隕石が顔面に飛び込んでくるなんてさ。くそ、命張ってつまんねえギャグかましちまった。
占いのくそったれ。星なんて大嫌いだ。
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