穴に落ちました……

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   その夜、気分転換に祖母の家に来ていた萌子(もえこ)はお気に入りのカンテラを手に、裏山をフラフラしていた。  うっかりミスして上司の田中総司(そうじ)にこっぴどく叱られ、落ち込んでいたからだ。  だが、  ああ、街灯もない山の中のカンテラの灯り、いい!  このぼんやりと光が広がる感じ。  ヒュッゲだ! と闇の中に浮かび上がるあたたかい光にうっとりしているうちに、すべて忘れて陽気な気持ちになっていた。  萌子は昔から、ロウソクの灯りや小洒落たライトにはまっていたのだが。  北欧のあたたかくのんびりとした暮らし、ヒュッゲに灯りが重要な役割を果たしていると知ってから、すっかりヒュッゲにはまっていた。  ああ、カンテラ最高! と思った瞬間、萌子の姿は山から消えていた。  
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