(2-17)

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(2-17)

 静かに落ちる黄金の滝に打たれながら、水面に映った自分の顔を見る。  白い肌に、黒い髪と瞳。人の姿になっている。  しかし、まだ浴び続けなければ、完全には人の姿になれない。両腕を見ると、黒い羽根がたくさんついている。  黄金の滝は肌を伝い、ほとんど波を立てることなく、腰の辺りにある水面へ落ちてゆく。 「いたいた。アクイラ」  振り返ると、木々をかき分け、鬱蒼とした森の中からヴィーナスが現れた。派手な帽子をかぶっている。 「この帽子、羽根がたくさんついてるし、あなたなら似合うんじゃないかと思って」  ヴィーナスは黄金の池の畔まで来ると、アクイラを眺め、 「でも、帽子より先に服が必要ね。アテナに頼んでおくわ」  アテナは機織りの名手でもある。 「てっきり鷲宮にいると思って、白鳥に乗って飛んできたのに、もぬけの殻だから焦ったわよ。まさか、お隣さんにいたとはね」  ヴィーナスはしゃべり続ける。 「ヘベが早とちりするから、ガニュメデスもみんな、あなたがわし座にいると思っているでしょうね。あなたがアンティノウス座に通っていること、ガニュメデスには内緒にしていてほしい?」  面白そうに言う。 「そうよね。あなたが鳥のままだと、ガニュメデスも寂しいでしょうからね。話かけても、独り言みたいだもの」  まるで今のヴィーナスのようにか。  アクイラは何も言わない。  ヴィーナスはかまわず、 「それにしても、アテナったら、獅子座流星軍はこの滝に打たれて人の姿になれるようになったと言ってたけど、こんなちょろちょろと落ちる滝で修行になるのね」  滝が落ちる先の、黄金の池に手を伸ばす。  指先が触れた瞬間、ヴィーナスは手を引っ込めた。 「あなたこれ、電気が通ってるわよ!」  ヴィーナスは顔を上げ、アクイラを見る。  アクイラは平然としている。  ヴィーナスはゆっくりとかぶりを振り、 「わたしは人の姿になろうなんて思わないわ」
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