「流星屋」の災難

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 Tマイナス5, 4, 3, 2, 1……ゼロ。  予定と寸分の狂いも無かった。コンピュータの制御により、流星発射装置(ミーティアランチャー)の化学燃料スラスターが一斉に作動。噴射されたガスが船体に当たる、かすかな音が伝わる。  人工流星(シンセティック・ミーティア)を乗せた合計50個のランチャーが、俺の宇宙船(ふね)「コバヤシマル」の針路の逆向きに、みるみる遠ざかっていく。  コバヤシマルは全長25メートルの小型貨物船だ。カーゴスペースの両脇に太陽電池パネルが広がり、船尾にはエンジンブロック、船首には直径5メートルの球形をした、定員2名のブリッジがある。といっても今そこにいるのは俺一人だけだ。人間としては。 『全スラスター、噴射停止。減速は全て予定通りです。突入回廊(エントリーコリドー)に到達。ミーティア放出開始』  今、俺の聴覚中枢に疑似音声を送ったのは、俺のたった一人(?)の相棒、体内埋め込み型(インプラント) AI の「ステラ」だ。この家業を始めて3年になるが、その間ずっと「彼女」は俺を支えてくれてきた。 「ステラ、イメージを回してくれ」 『了解です、リック』
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