01:ゆめの青空

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01:ゆめの青空

 青――それは、遥か遠くに広がる色の名前だ。  俺とあいつの目の前には、一枚のカンヴァスがある。部屋を埋め尽くさんばかりの無数のカンヴァスの中でも、一際大きな一枚。 「今回はまた大作だな、オズ」 「まあな」  ――青。  カンヴァスを埋め尽くすのは、青だ。だが、その青もカンヴァスの上下で色合いが異なる。上は、グラデーションを描く薄い青。そのところどころに、白い煙のようなものが浮かんでいる。そして、ちょうどカンヴァスの中心を走る線によって区切られた下半分は、深く、今にも飲み込まれそうな底の深い青を湛えている。ただ、表面には白いさざめきが散っていて、光を孕んでいることがわかる。  どこまでも広がる青空と、空を映す巨大な水面。  それはまさしく「この世の誰も見たことのない」光景だ。天が青いわけがない。こんな巨大な水溜りが存在するはずがない。カンヴァスを指差して笑う奴を何人も見てきた。  だが。 「また夢に見たのか? 青い空の夢」 「ああ」  俺は大げさに息をついて、傍らに佇む相棒を見上げる。
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