シェヘラザード

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シェヘラザードは、JRの車内で、頭を抱えて呻いていた。 物語が、浮かばない……何も、思いつかない……どうしよう、どうしよう。 シェヘラザードは、シャハリヤール王のもとへ夜伽に向かう途上である。 シャハリヤール王は、処女と一夜を共にしたあと、その女を殺す性癖を持っていた。これまで何千人もの処女が王の手にかかって、露と消えていった。 そんなビョーキな男がこの国の王様ってどーゆうこと? 世も末だわ。シェヘラはこれまで、王宮から何度お呼びがかかっても断固、拒否し続けてきた。 王のせいで、国中の処女がほぼいなくなる事態となってしまった。忌々しきことである。 物語を語るのが巧いシェヘラなら、王は殺さず、シェヘラを気に入ってくれるのではないか。そう考えた高官の父親にシェヘラは、無理矢理、差し出されたのであった。 ただの物語じゃあ駄目よ。 物語でなければ、ヤラれたあと、殺される。殺されるのよ。
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