白の少女

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イトはまだ、15歳の思春期真っ只中。 外に出て遊びたい、学校に行きたい、友達を作りたい。 そんな欲望のまま生きたい青春時代を、体内で巣食う病気が阻害した。 3年前、イトは家族と事故に遭遇。 水難事故で、両親は助からなかった。 1人っ子だったイトは叔父にあたるナオに預けられたのだが、久しぶりに再会した姪に予想外の大病を患っている事を知る。 この病気が何なのか判らない、未知なる病気。 いろいろ説明されたナオだったが、殆ど何を言ってるか分からなかった。 ただ1つ鮮明に覚えていた事、このままだと細胞が死滅していき死に至るという事だけ。 手始めに、髪の色が抜けて行った。 純粋な黒が徐々に白く染まり、今はもう黒い場所は何処にもない。 だがイトは「この方が可愛く見えるでしょ?」と笑顔で言った。 今は少しずつ肌に影響を及ぼしている様だが、「見られる事少ないけど、やっぱりちょっと恥ずかしいな」と年頃の恥じらいを見せている。 イトも病気の事は知っている。 知らないのは、細胞が死滅していつかは死んでしまうという結末だけ。 事実を言えず頑張ってのみ込もうとするナオに対して、治った後の夢を語るイトの姿は非常に心苦しい。 毎日様子を見に来ているからこそ、彼女が隠れて流した涙の事も知っている。 「いつか、ヒマワリ畑に行きたいな」 だからこそ、この願いを何とか叶えられないかと頭の中で模索していた。
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