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1話:7月21日(木)①
『次は~〇〇駅~。〇〇駅~』
夕方の電車内にアナウンスが響く。夕方ということで学校帰りの学生や定時上がりの会社員がいっぱい乗車しており、それなりに混んでいる。
僕、本間正志も高校2年生の学生で、学校帰りだ。
そんな僕はこのような人混みにいると、いつも考えてしまうことがある。
例えば、目の前の席でスマホをいじっているスーツを着たサラリーマン。こんな何の変哲のない普通に見える人たち。もしかしたらこの人が人を殺したことのある人物、つまり殺人鬼かもしれない。そう思ってしまうのだ。
これだけ色々な技術が進歩した現代でも未解決事件というものは起きている。駅や街中も意識して見てみると、昔の未解決事件の手配書が数多く貼られている。そんなお尋ね者たちが今この瞬間、自分のすぐ近くにいるかもしれない。
もしかしたら……。そう思いながら、僕は隣に立っているショートカットの同級生、佐山咲を見る。
「ん? なに? なんか顔についてる?」
「いや、なにも……」
咲とは中学校の頃からの腐れ縁だ。僕が中学1年の夏休みに愛知県からここ東京に転校してきた時に近所の公園で知り合ったのだ。学校でも同じクラス、隣の席で色々とお世話になった。咲が所属していた陸上部でも面倒見が良く、周りからの信頼が厚かった。高校生になっても陸上を続けている。先輩が引退したら、部長をやることになっているらしい。帰宅部の僕とは大違い。まあ、ここで言いたいことは、咲は基本的に面倒見が良いということだ。
「そうだ! マサ、昨日のテレビ見たでしょ!! あの『未解決事件簿』ってやつ! ああいう事件とかマサ好きだもんね!」
「実はそれ……見れなかったんだ」
「なんで? 昨日あんなに楽しみにしてたじゃん」
「ちょっと聞いてくれよ!! 父さん、ひどいんだよ!!」
そうして僕は昨晩の愚痴を咲にぶちまける。
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