私とキャンディ

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私とキャンディ

 私の大好きなひまわりが咲く頃に、あの子は遊びに来てくれる。ポケットからカラカラとドロップ飴の缶の音を鳴らして、軽快に走って来る。  私がずっと好きなのは、赤いイチゴ味のキャンディ。あの子はメロン味が好き。幾つになっても変わらない無邪気さのお陰で、また会える楽しみはずっと色褪せない。  カラカラカラ……。  今年も音がする。私は大きく手を振った。今年も私に夏が来た。大好きな夏、彼と過ごす大切な時間。  彼は私の大好きなひまわりの花を持って来てくれた。元気いっぱいなひまわりに囲まれて、私の気持ちも明るくなった。  彼は去年より一回り大きくなっていた。成長期だからかもしれない。好きなサッカーはまだ続けているのだろうか。毎年見る日に焼けた顔も、少し大人びて来た。  私はそこに、どこか寂しさを感じてしまう。あどけなさが抜けて行く事は嬉しくもあり、寂しくもある。  そんな気持ちで彼を見つめていると、彼は急に何かを忘れた様に、何処かへ走って行った。  照りつける太陽が眩しい夏空の下、私は何だか虚しい気持ちに包まれた。  一人取り残された私は、ひまわりの茎を蟻が登って行くのを、目を細めて見つめていた。
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