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蒼真さんの車が見えてきた所で後ろからハグをされた。
「蒼真さん…?大丈夫ですか?」
「…はい。やはり、少し緊張しました」
お腹の前にある腕をぽんぽんと軽く叩いてから、反転して私も蒼真さんを抱きしめた。
「藤子さん!」
「頑張りましたね、蒼真さん」
「ふ、藤子さん…!」
「私も緊張しました」
ぎゅうと息が苦しくなるくらい抱きしめられた。苦しいけど暖かくて幸せな気持ちになる。
ただ耳元で「ああ…将軍様…ま、まだダメですまだダメです」と苦し気で荒い息が聞こえてきたから、そっと胸元を押した。
「藤子さん…」
「緊張しましたけど、蒼真さんの家族に会えて良かったです。とても素敵な家族じゃないですか」
「そんな。藤子さんの家のような温かさはありませんよ」
「いいえ。温かいですよ。蒼真さんが気付いていないだけです。それか、気付こうとしていないだけです」
少しだけ叱るような口調になってしまって、慌てて蒼真さんの手を握る。
「短い時間でしたけど、私には仁科家の温かさが見えましたよ。だから、私が見えたものが、蒼真さんにも見えたらいいなって思いました」
「藤子さん…」
瞳を潤ませた蒼真さんの顔が、その時はお母さんに似ているように感じた。
蒼真さんも不器用な人なんだ。
本当は素直に自分の気持ちを言いたいのに、伝え方がわからないんだ。
「藤子さんは優しいです。まるで聖女、または女神!藤子さんがそうやって優しい言葉をくれるだけで僕は嬉しくて息が苦しくなります。も…、好きすぎて溶けそうです!」
…私への伝え方も極端というか…。
だけど、キューンとしてしまうのだからどうしようもない。
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