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でもそうか。ようやく全てが繫がる。
「だから私と友達の会話を盗み聞きして「俺の店、社員募集中なんだけど」って、声かけてきてくれたんですね」
「人聞きが悪いことを言うな」
「事実なのに」
「……でもま、そしたら「お兄さん、なんて良い人なんですかー!」って返ってきたけどな」
「あの時はイケメンに見えたんですけどねぇ」
「何が言いたいんだ」
「いえいえ、なんでもありません」
おかしさが込み上げてきて、くすくすと笑ってしまった。
「ていうか、アサギさんはなんであの居酒屋さんにいたんですか? しかも一人で。似合わなすぎると思うんですが」
「……あの日は姉貴の命日で、かつ、あの店は姉貴がなぜかよく行ってた店だった――それだけだ」
「へ~、本当お姉さんラブですね」
「……お前、これで明日記憶飛んでたら覚えてろよ」
アサギさんが握りこぶしを振りかざし、私を脅す。
怖い! でも知りませーんっ。
「ふふふ」
私はあくまで上機嫌だった。
だから、アサギさんが切なげに視線を落とすのを見逃してしまったのだ。
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