7 あの日の記憶は雨音と

21/22
186人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
 でもそうか。ようやく全てが繫がる。 「だから私と友達の会話を盗み聞きして「俺の店、社員募集中なんだけど」って、声かけてきてくれたんですね」 「人聞きが悪いことを言うな」 「事実なのに」 「……でもま、そしたら「お兄さん、なんて良い人なんですかー!」って返ってきたけどな」 「あの時はイケメンに見えたんですけどねぇ」 「何が言いたいんだ」 「いえいえ、なんでもありません」  おかしさが込み上げてきて、くすくすと笑ってしまった。 「ていうか、アサギさんはなんであの居酒屋さんにいたんですか? しかも一人で。似合わなすぎると思うんですが」 「……あの日は姉貴の命日で、かつ、あの店は姉貴がなぜかよく行ってた店だった――それだけだ」 「へ~、本当お姉さんラブですね」 「……お前、これで明日記憶飛んでたら覚えてろよ」  アサギさんが握りこぶしを振りかざし、私を脅す。  怖い! でも知りませーんっ。 「ふふふ」  私はあくまで上機嫌だった。  だから、アサギさんが切なげに視線を落とすのを見逃してしまったのだ。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!