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眠そうな顔で杏が起きてきた。
「おはよ、顔洗っておいで」
母親の姿を見て気まずそうだったが、自分の好きなフレンチトーストをみつけると笑顔になった。
「チケットもらったんだけど水族館行かない?杏」
神楽にもらったチケットをテーブルに置いて杏に見せる。
「え、どこ?」
「近くだよ。岳は聞かなくても行くだろうけど、どうする?」
杏がちらりと美加のほうを見る。
「ママは体調悪いからまた今度な。今日は俺たちだけで行こう」
「うん」
美加が来ないので安心したのか、お皿を持ってソファ前のローテーブルに移動して食べ始めた。
何をしたらこんなに仲が悪くなるのかわからない。
美加も娘の顔を見ない。
岳が起きてくると入れ違いに美加が部屋に入っていった。
「今日水族館行くぞ」
「ほんと?どこの?」
男の子は屈託ない顔で朝から元気がいい。
夜泣きがひどかった杏とその横で爆睡していた岳を思い出す。
他人だから面倒を見れる。
岳を座らせて薄暗い部屋を覗くと、こども達の布団の上に転がって眠る美加の姿があった。
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