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「私の服が気に入ったようなので譲ったんです。今日は同じ格好をして庭に出たいというので、ぜんぶ、私の帽子やエプロンに道具をつけてあげたんです」
「いやいや、放つ空気も匂いも似ていました。さすが姉妹。そっくりで、疑いもしませんでした」
なにか気配を感じているのか、または姉が密やかに囁いているなにかを察したのか、美羽が怯えるようにこちらに走ってきた。
「お姉ちゃん、いま、なにか鳥みたいなのがバサバサって音を立てていたような気がしたんだけれど」
鳥? 舞は首を傾げる。そしてまたふっとカラク様がいなくなっている。
「ほら。あのカラスかも。さっきからカアカア鳴いているの」
奇妙なものを感じた。この庭にカラスなんていつでもいるし、森の木陰には何羽もいる。石畳の小路をちょんちょん歩いて、花をついばんでいるときだってあるし、秋になると、カフェのそばに植えている姫リンゴをつついたり、冬には白い雪の中でもはっきりと映える赤いナナカマドの実も食べている。
でも思い返せば、カラク様がいなくなると、そばにカラスがいる?
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