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おまけ1.ピーターの初恋
『なあ。フロプシー』
『なあに? ピーター』
今、チェストの上には俺とフロプシーしかいない。
他の奴らはメアリーのおもちゃにされている最中だ。
あ、メアリーっていうのはハリーの母親のことじゃないぜ。
ハリーとソフィーの子供のことだ。
三歳のメアリーはぬいぐるみ遊びが大好きで、しょっちゅう俺達の誰かをそばに置いているんだ。
でもこれは――俺にとって千載一遇のチャンスだ。
『あの、さ。お前、なんで俺には優しいの?』
ああ、やばい。
声が裏返っちまいそうだ。
昔のハリーのことを馬鹿にできないや。
そう、小うさぎ三姉妹のうち、フロプシーだけはいつも俺に冷たくしないんだ。
だからかな、気づいたら、その……好きになっちまってたってわけ。
ぬいぐるみは恋をしないと思っていたけれど、どうやら違ったようだ。
フロプシーがくりっとした目を俺に向けてきた。
『どうしてってそれは……』
その時、メアリーが向こうから駆けてきた。
モプシー、カトンテール、ベンジャミン。でん、でんとぬいぐるみを一体ずつチェストの上に並べていく。そして疾風のようにどこかへ走り去ってしまった。相変わらず元気なお姫様だ。
『いやあ、疲れたな。今日はピクニックごっこに付き合わされたよ』
『おいベンジャミン。そう言う割には上機嫌じゃないか』
こいつ、メアリーと遊ぶのが好きなんだよな。
いや、こいつだけじゃないか。
みんな好きだ。
メアリーは俺達を外に連れ出してくれるし、一人前に扱ってくれるし。
でもこれで二匹、もとい二体だけの時間は終了か、と残念に思っていたら、
『さっきの話だけど』
フロプシーの方から話を戻してきた。
『ベンジャミンがピーターのことを好きだからよ』
『……は?』
予想外の回答に思わずフロプシーをまじまじと見つめると、当のフロプシーがもじもじしながら言った。
『好きなうさぎの友達だもの、当然でしょ?』
唖然とする俺に、ごめん、言うの忘れてた、と横で話を聞いていたベンジャミンがさらりと爆弾発言をかましてきた。
『俺、フロプシーと付き合ってるんだ。今度結婚することにしたから』
『……はあ? マジ?』
『モプシーとカトンテールともね』
『ななな、なんだと?!』
『三姉妹だからね。まとめて引き取ってあげないと不公平だろ?』
*
『……なあ、クマスケ。俺、泣いていい?』
『はい! この胸にどーんと飛び込んできてくださいっ!』
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