2/10
259人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
"お嬢様が姿を消しました__!" そう言って飛び込んできたのは、侍女のメイだった。 最初に思ったのは、「何を馬鹿なことを」だった。この王宮の奥から、姿を消せるはずなど無い。だからこそ、自分はここにアレックスを連れてきたのだから。 しかし、メイのあまりの慌て様に不安をいだき、一週間ぶりにアレックスの部屋を訪ねてみた。 ………居ない。 アレックスが、居ない!! 「おい!ポーラとウィリアムを呼べ!直ぐにだ!」 噛みつかんばかりの剣幕に、メイが震え上がって部屋を出ていった。 すぐにポーラとウィリアムを連れて戻ってくる。 「殿下、何事でしょうか?」 ポーラもウィリアムも、何かを察してか頭を垂れたまま聞いた。 「アレックスが居ない。すぐに行方を探せ!」 まさか、と声をもらすポーラ。 「王宮内を見てまいります。」とすぐさま踵を返すウィリアム。 そこから王宮内の大捜索が始まったが、アレックスの姿は見つけることができなかった。 「え?どういうことでしょうか?」 アレクサンドラの部屋には今、ウィリアムとアレクサンドラしか居なかった。 こんな事は珍しい。 いつもは、必ずメイなどの侍女やポーラのうち誰か一人はいるはずなのに。 「ですから、私が機会をつくりますから、王宮の外へ__そうですね、ご実家はまずいですから、我が家へ__いらっしゃいませんか?と申し上げたのです。」 それは、つまり、ここから出られる、ということだろうか? 気分が急上昇した。既に二ヶ月近く、この部屋からほとんど出ない生活をしている。日々のやるべき事だけをこなして、ただただルーカス様がここへ来てくれることを願うだけ。 その願いも、今まで何度叶っただろうか。 でも…。 そんなこと、ルーカス様が許すとは思えないのだけれど。 つまりこれって、ルーカス様には内緒でってこと、よねぇ?うーん…。 出たい気持ちと、ルーカス様の顔を天秤にかけること数分。 「アレクサンドラお嬢様。我が妹エミリも、ここのところずっとふさぎ込んでおります。理由はもちろん、お嬢様と会えなくなったことにあります。……是非、一度顔を見せてあげて頂きたいのです。」 この一声で、アレクサンドラの決意は固まった。大親友に会いに行きたい、色々と話したいという欲求が、湧き出てきたのだ。 「わかりました。……私もエミリに会いたい…。連れてって下さいませ。」 ウィリアムは力強く頷いてみせた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!