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"お嬢様が姿を消しました__!"
そう言って飛び込んできたのは、侍女のメイだった。
最初に思ったのは、「何を馬鹿なことを」だった。この王宮の奥から、姿を消せるはずなど無い。だからこそ、自分はここにアレックスを連れてきたのだから。
しかし、メイのあまりの慌て様に不安をいだき、昼間としては一週間ぶりにアレックスの部屋を訪ねてみた。
………居ない。
アレックスが、居ない!!
「おい!ポーラとウィリアムを呼べ!直ぐにだ!」
噛みつかんばかりの剣幕に、メイが震え上がって部屋を出ていった。
すぐにポーラとウィリアムを連れて戻ってくる。
「殿下、何事でしょうか?」
ポーラもウィリアムも、何かを察してか頭を垂れたまま聞いた。
「アレックスが居ない。すぐに行方を探せ!」
まさか、と声をもらすポーラ。
「王宮内を見てまいります。」とすぐさま踵を返すウィリアム。
そこから王宮内の大捜索が始まったが、アレックスの姿は見つけることができなかった。
「え?どういうことでしょうか?」
アレクサンドラの部屋には今、ウィリアムとアレクサンドラしか居なかった。
こんな事は珍しい。
いつもは、必ずメイなどの侍女やポーラのうち誰か一人はいるはずなのに。
「ですから、私が機会をつくりますから、王宮の外へ__そうですね、ご実家はまずいですから、我が家へ__いらっしゃいませんか?と申し上げたのです。」
それは、つまり、ここから出られる、ということだろうか?
気分が急上昇した。既に二ヶ月近く、この部屋からほとんど出ない生活をしている。日々のやるべき事だけをこなして、ただただルーカス様がここへ来てくれることを願うだけ。
その願いも、今まで何度叶っただろうか。
でも…。
そんなこと、ルーカス様が許すとは思えないのだけれど。
つまりこれって、ルーカス様には内緒でってこと、よねぇ?うーん…。
出たい気持ちと、ルーカス様の顔を天秤にかけること数分。
「アレクサンドラお嬢様。我が妹エミリも、ここのところずっとふさぎ込んでおります。理由はもちろん、お嬢様と会えなくなったことにあります。……是非、一度顔を見せてあげて頂きたいのです。」
この一声で、アレクサンドラの決意は固まった。大親友に会いに行きたい、色々と話したいという欲求が、湧き出てきたのだ。
「わかりました。……私もエミリに会いたい…。連れてって下さいませ。」
ウィリアムは力強く頷いてみせた。
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