第二章

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届いたものを部屋に運び入れ、あれやこれやと片づけをしたりと忙しく動いているうちに、夕ご飯を支度する時間になった。みんなが帰ってくる前に、と支度をはじめ、都築さんと多田さんもお手伝いをしてくれる。 「ひめさん、今日は何にするの?」 「リクエストとか、ありますか?」 「俺オムライス食べたい」 「いいですね、都築さん!!俺も食べたいです!!」 「わかりました、挑戦してみます」 あまり料理が得意なわけじゃないけど、自炊をしていた分、何かを買って食べるという習慣がない。たまにはお弁当などを買ったりということも、もちろんあった。だけど、外へ出るのが怖くなって、できる限り自炊に切り替えて必要最低限の外出にとどめていた。 どうしても甘いおやつが食べたくなった時も、我慢ができないのであればクッキーなどを焼いて食べたから、ケーキはここ1年、食べていない。 「ひめさん、お料理上手だね」 「本当に。俺たち健康になれるよ」 本家からご飯を持ってきていたらしい皆さんだけど、やはり、外食が多かったようで。ほとんどキッチンは使われていなかった。 「うわぁ、すごい」 「組長たちも驚くね」 家族も祖父母も、彼氏でさえも料理を食べてはくれなくなった。一人で食べる食事ほど味気ないものはなかったから、いつしか作らないようになって。食べる量も最低限になった。 「もうすぐ帰ってくるみたい、さっき連絡が来てた」 「お皿用意してるね、ひめさん」 都築さんが教えてくれて、側でアシスタントをしてくれる。その間に多田さんはお皿を用意して待っていてくれる。 お皿に盛りつけている間に、お仕事だった人たちが帰ってきて食事となった。オムライスを食べるのは久しぶりだと喜んでもらえて、あの普段表情が動かない匡将さんでさえも、少し口角が上がっていた。 「ありがとうございます、日和さん」 ごちそうさま、ありがとう、その言葉は悲しい私の思い出を少し、薄くさせた。
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