3107人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
届いたものを部屋に運び入れ、あれやこれやと片づけをしたりと忙しく動いているうちに、夕ご飯を支度する時間になった。みんなが帰ってくる前に、と支度をはじめ、都築さんと多田さんもお手伝いをしてくれる。
「ひめさん、今日は何にするの?」
「リクエストとか、ありますか?」
「俺オムライス食べたい」
「いいですね、都築さん!!俺も食べたいです!!」
「わかりました、挑戦してみます」
あまり料理が得意なわけじゃないけど、自炊をしていた分、何かを買って食べるという習慣がない。たまにはお弁当などを買ったりということも、もちろんあった。だけど、外へ出るのが怖くなって、できる限り自炊に切り替えて必要最低限の外出にとどめていた。
どうしても甘いおやつが食べたくなった時も、我慢ができないのであればクッキーなどを焼いて食べたから、ケーキはここ1年、食べていない。
「ひめさん、お料理上手だね」
「本当に。俺たち健康になれるよ」
本家からご飯を持ってきていたらしい皆さんだけど、やはり、外食が多かったようで。ほとんどキッチンは使われていなかった。
「うわぁ、すごい」
「組長たちも驚くね」
家族も祖父母も、彼氏でさえも料理を食べてはくれなくなった。一人で食べる食事ほど味気ないものはなかったから、いつしか作らないようになって。食べる量も最低限になった。
「もうすぐ帰ってくるみたい、さっき連絡が来てた」
「お皿用意してるね、ひめさん」
都築さんが教えてくれて、側でアシスタントをしてくれる。その間に多田さんはお皿を用意して待っていてくれる。
お皿に盛りつけている間に、お仕事だった人たちが帰ってきて食事となった。オムライスを食べるのは久しぶりだと喜んでもらえて、あの普段表情が動かない匡将さんでさえも、少し口角が上がっていた。
「ありがとうございます、日和さん」
ごちそうさま、ありがとう、その言葉は悲しい私の思い出を少し、薄くさせた。
最初のコメントを投稿しよう!