あと5分の砂時計

2/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
俺が意地悪く言い返せば、菜穂は明らかに不機嫌になって長谷部の方へ歩き出す。 そして、単刀直入に長谷部に告げた。 「ねぇ。この砂時計、目障りなんだけど」 そう言いながら、砂時計の置かれた椅子を軽く蹴る。 椅子は軽く揺れて砂時計がぐらつき、長谷部は慌てて砂時計を確保した。 「あ、あの……ごめんなさい」 菜穂の不機嫌オーラに威圧された長谷部は、ただ謝り、砂時計を鞄に丁寧にしまう。 「菜穂、こえぇな」 「なぁ」 慶次のコメントに大きく同意する。 菜穂は、正直者と言えば聞こえはいいが、自分の感情もコントロールできないとか、ないなって思う。 ま、俺も人の事言える人間じゃないんだけどね。 長谷部の事が気になるのは、砂時計の事もあるけど、最初は俺よりも成績が良いって事だった。 俺より成績が良い奴はそれなりにいる。 だけど、そいつらは次元というか、レベルが違う奴らで、張り合うのも馬鹿らしい。 そんな中、長谷部は俺とは同レベルか、ともすれば俺以下の空気感なのに、俺より成績が良いのが気に入らない。 そう思って見ていたら、彼女の持っている砂時計が引っかかったんだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!