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道をはさんだ斜向かい、茶色の屋根の3階建ての家にその子が越してきたのは、幼稚園に入る前のことだった。
お母さんに連れられてうちの玄関まで挨拶に来た無口なその子は、「しば、さとしです」と名乗った。
長めの睫毛に彩られた目がぱっちりとして、白の似合うきれいな肌をした子だなぁ、と子ども心に思ったことは覚えている。
長いつき合いになるんだろうなあ、なんてことも思ったっけ。我ながら、3歳の子どもにしては渋いことを考えたものだ。
そのまま彼とのつき合いが20年以上も続くことになるだなんて、考えもしなかった。
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