死刑になる日(角弥の視点)

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死刑になる日(角弥の視点)

 ――今日は俺が死刑になる日だ――  俺の名前は 角弥京樹(すみわたるきょうき)。  二十歳になったが、それも終わる。名前だけは立派につけてもらったが、俺の母親は男に媚びを売る事と身体の快楽に溺れるのに特化した典型的な女だった。そんな女は子育ては上手いはずもなく、金も親父に使ってカツカツの貧乏暮しまっしぐらだった。親父?酒と女にギャンブルが大層好きな男だったよ。その二人が一緒になれば、悪循環ってのは上手い具合に回る。  気がつけば昔ながらの畳部屋にお情け程度のキッチンと冷蔵庫、押し入れ、風呂なしシャワーと便所、丸テーブル、テレビ……最後の方はぶっ壊れて動かなくなったな。そんな部屋に三人、暮らす異常さは生きるのに必死な俺に容赦しなかったよ。  ……言いたくねぇ生き方だ。  言いたくねぇ人生の中で、一人だけよ。こんな俺に、学生時代に話し掛けて変わらない対応してくれた友人が居た。こんな俺には勿体ない大事な友人との思い出が蘇って連れられて歩かさせる足取りが重くなる。  俺が犯した罪は殺人だ。親殺し、赤の他人を殺し、下した裁きは死刑だ。俺は生きるべき人間じゃねぇ、マスコミもこぞって俺の人生を面白可笑しく書いてニュースにしてくれるだろうよ。けれど、俺の思いはお前らに絶対言わない。憎め、憎めばいい。その恨みも無情さも何もかも抱えて死ぬ。  そして、俺の死刑は決行された。
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