第16話 弟子は感謝された

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「シオンが私に対して、人々のために力を尽くして欲しくないって思ってた事、正直ショックだったわ。私、あなたにそんな辛い気持ちをさせてるなんて、思ってもなかったから……。でも、もうそんな気持ちをさせるようなことしないから。悪い人たちに利用されないように、しっかりするから。情けない師匠でほんとごめんね」 「いえ、そんなことはありません! お師匠様は、情けなくなんか!」 「あははっ、ありがと」  お師匠様は申し訳なさそうに、お礼を言われました。  ここまでか。  俺はそう思いながは、一つため息をつきました。どうやら、お師匠様が目覚めてすぐに妻になって貰う事は出来ないようです。  魔素が弱まるまで、自分の力が必要とされなくなるまで、妻になる話は待って欲しい。  それはとても抽象的な条件でした。  正直、もう少し具体的な条件を出してもらわなければ、いつまでも引き延ばされる可能性があります。仕事の場合は、絶対に具体的に話を詰めなければならないと案件でしょう。  しかし、これがこの時お師匠様が出来た、精一杯の譲歩。  もっと迫ってもいいのですが、タイミングの悪いことにこの場にはセリスもいます。  ほら、見てください。  あの婆の口を挟みたさそうな顔を。  俺は背筋を正すと、お師匠様に向き合いました。
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