歩きスマホ

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 格安スマホ乗り換えキャンペーンに乗じてスマホデビューした正樹。早速、やってみたかった『歩きスマホ』を始めた。如何にも友達がいっぱいいるんだぞ!彼女がいるんだぞ!と誇示できるように思ったので。見栄を張ってるんだ。虚栄心が強いんだな。だから時に彼女からのメールを見ているふりをしてにやにやして見せる。  実際には母からの『歩きスマホ』は危険だからしたら駄目よというメールを見ているのだ。その時だ。前方からやって来たお婆さんにぶつかってお婆さんを転倒させてしまった。ぽきっと音がした。骨折したようだ。 「痛い!痛い!」と呻くお婆さんも意とせず正樹は猶も見栄を張ってにやにやしながら『歩きスマホ』を続けた。綺麗なお姉さんが横切ったとも知らずに・・・この様に『歩きスマホ』をしていると、目の保養が出来なくなったりする。  そうこうして正樹は殊更にでれっとした顔になって上体をなよっと横によろつかせた時、勢いよくやって来たあんちゃんと接触した。 「気をつけろ!この野郎!」  あんちゃんは擦れ違いざま怒鳴るなりすたすたと去って行った。  何だよ。自分からぶつかっといて・・・と正樹は不満たらたらになったが、直ぐに気を取り直して『歩きスマホ』を再開した。  何を見ているのかと言うと、さっきの母のメールだ。それを見続けながら『歩きスマホ』をしてにやにやしているのだ。何というくだらない奴。何という哀れな奴。何という愚かな奴。何せ『歩きスマホ』することがトレンドに乗りイケてると思い込んでいるのだから救いようがない。
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