でんしゃをまつ

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でんしゃをまつ

 少年はでんしゃを待つ。本を読んで待つ。 「まもなく 3番線に 東京行きが まいります」 「シュッシュッポッポー」  少年の前に、でんしゃが止まる。だけど、少年はムスッとした表情で、でんしゃを見つめる。 「お客様、お乗りになりませんか?」  車掌にたずねられ、少年は答える。 「乗りません!!」  怒る少年を見て、不思議そうな表情を浮かべる車掌と運転手。 「ドアが、閉まりまーす」 「シューッ」  ひとまず、でんしゃは出発した。少年は再び本に目を落とす。 「まもなく 3番線に 東京行きが まいります」 「シュッシュッポッポッ」  そしてまた、でんしゃがやって来た。 「黄色い線の内がわまでお下がりくださーい」 「シュッシュッポッポ…」 「何でだよ!!」  少年は怒り、持っていた本で運転手の頭をたたいた。すかさず車掌が間に入って少年をおさえる。 「…いっ…」 「お客様、おちついてください!」 「なんでだよ!」 「暴力は犯罪です!」 「そうじゃない!なんで在来線なのにシュッシュッポッポッなんだよ!!せめてガタンゴトンだろそこは!」 「…別に…どっちでも…」 「よくない!ちゃんとマジメにやれよ!!聞いてるのか!?」 「だめです、おきゃくさまー!」 「はなせ、あっきー!!」  少年は運転手…役の少年を再びたたこうとするが、車掌役の少年あっきーにしがみつかれて、その場でジタバタする。たたかれた頭を押さえてうずくまっていた運転手役は、持っていたロープを地面にバシっと投げつける。 「キィーッ!!」  そして高い声を発して泣き出した。 「あー、はるちゃんがー」 「ギャーッ!!!」  あっきーがなだめようとするが、運転手役はるちゃんの泣き叫びはヒートアップする。あっきーは責める目付きで少年を見る。 「てっちゃん、ホントにやりすぎだよ」 「なんでだよ!電車ごっこで運転手やりたいって言ったのははるちゃんだろ!だから本物をめざしたのに…」 「暴力はだめ!!そんな固い本でたたいて!はるちゃんまだ小さいんだよ!?」  あっきーに強く言われ、ひるむてっちゃん。あっきーは再びはるちゃんに近寄る。 「はるちゃん、もう行こう。今日は僕とふたりで遊ぼう!ね!」  あっきーがはるちゃんの手を引くと、はるちゃんは自然と立ち上がった。そして未だ泣きつつも、あっきーに引かれるまま歩き出す。 「な…ちょ、なんでだよ!!」  そのまま置いてかれたてっちゃんは、怒りながらもどうすればいいのかわからず、その場で立ち尽くす。  そして、ぶつけようのない怒りをそのまま吐いた。 「…ふん!知らない!いいよ!!うち帰って、プラレールするから!!」 ≪終≫     
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