真夏の夜、君と見た空

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真夏の夜、君と見た空

『たまにはさ、二人で飲みにでも行かね?』  会社がお盆休みに入った初日。  エアコンの効いた部屋で、ごろごろしていた私に届いた、思わぬ人からのメッセージ。 「こんにちは」も「お久しぶり」もなく、いきなりそんなふうに切り出すところは、昔と全然変わっていない。  私はベッドの上で、ごろんと仰向けになると、指先でスマートフォンをなぞった。 『は? 何なの、突然』  ちょっと冷たく、突き放してみる。  既読の文字が現れたあと、返ってきた返事は全く会話になっていない。 『十五日とかどう? 場所は駅前の居酒屋あたりで』  私は小さくため息を吐いてから、ふっと口元をゆるませた。 『丹野。あんた全然変わってないね?』  こうやって、勝手にどんどん予定を決めていっちゃうところとかがね。  そんなことを思ったら、久しぶりにその声が聞きたくなって、気づくと私は丹野に電話をかけていた。
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