7話 味方になるらしい

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ライアン王とリリアとの争いの後 フォーサイス王国の王家は滅び、 国の領土はアルトゥーラ連邦のものへとなった イザベラ女王は味方の死人もなく、領土すら増えたことでファルクを自らの側近である騎士へと認め、ウルリヒ盗賊団全員を国民へと認めたのだ 居場所が無かった彼等に故郷が出来、そして仕事さえ与えられた 元々この国にはウルフに助けられた言い伝えが有るために、銀狼を怖がるものは少なく 銀狼達もまた国の宝として国民から愛されるものとなった アルトゥーラ連邦、高みへと有る国の名前は その栄えた事により名を改めた 「 ウォセカムイ帝国と名乗る 」 吠える神、と言う意味が込められたこの国は ウルフの聖獣を持つ召喚師と国を守る近衛隊には、銀狼をパートナーにする者がいる 他国より戦力があり、団結力も有る為に争いの無い平和な国へとなっていた 銀狼が居るからと自慢しないのは良いことだ 「 ガウッ!( ロルフ~、そろそろ子供欲しくなぁい?私、若いよー? )」 『 欲しくない!それに俺は聖獣だっ、獣と同じになるもんか! 』 困ったことに、あの戦いから銀狼のメスに好かれている ランクも上がったらしく体格は彼等より大きな野生の金狼ほど 余りにも避けたり逃げてるから体格差なんて気にしてないが…… 「 あははっ。ロルフはモテモテだな~ 」 塀に腕を乗せ、爽やかに笑うのは俺の主であるファルク あれから恋愛の話しは聞いてないが俺は知ってる 此処に元々居た、国民の子と仲良くなってるのは知ってるが、彼はまだ二十歳程度 遊び盛りなのに、イザベラの側近でも有るから多忙なのだろう 今日みたいに、他の銀狼と遊ぶ様子を見ることは余りない 『 笑ってないで助けてくれ! 』 「 良いじゃないか。その子は雌だし?繁殖してくれるのも俺達の為になる 」 『 繁殖って、だから俺を銀狼と同じ扱いにするな!! 』 「 あははっ!! 」 聖獣が獣と繁殖すれば、只の獣へと成り下がると聞いた 其は、フィンレーとなら別にいいと思うのだが 此処にいる彼女達の為に成り下がる気はない だからこそ逃げる日々を繰り返すことで、反射神経を鍛えてるんだ、とポジティブになり過ごしている 「 はー、面白い 」 『 面白くない……俺には、好きなやつがいるし 』 月が昇る夜は、比較的に人型になることが多い この姿なら銀狼達は諦めてくれるからだ ファルクの国の見張りに合わせ、彼の横にある壁に凭れ、月へと視線を上げ息を吐く 人型はまだ本来のランクでは届かないのか、姿の変化は見られない 変わらない青年の姿に、俺はまだ自分が学生のように思える いや、実際に大学生だったのだが横にいるファルクの方が大人びて来たから、少しだけ年齢の速さを改めて感じる 「 好きなやつ、あのフェンリルだよね? 」 『 そ、そうだよ! 』 「 人型でもイケメンだったんだから、獣から見てもそうだろうな 」 獣から見ても、俺はどうなんだろうか 銀狼達を見ても少し顔立ちが違う程度で同じに見えることは多い だが人の顔の判断は、前世と変わらず違うと分かる 月から視線を落とし、ファルクと同じように塀へと腕を乗せ、ルイスには話さなかったことを話し始めた 『 俺は前世、人だから……獣の顔なんて、獣のまま。でも人型だと区別が付く 』 「 前世の記憶があるのか? 」 『 あるよ。聖獣も元は人なんだよ 』 驚いたように問う彼に、俺は目線をやり 静かに言えば同じ身長程になってるファルクは腕へと顎を乗せ背を丸めた 「 聖獣かぁ、良いような悪いような…… 」 『 俺は嫌いじゃない。死なないがその分、主の子孫が見れるから 』 「 あっ、ロルフの前の主は、あのルイスって聞いたんだがどんな奴だったの? 」 問われた言葉に、俺は答えて良いのか迷った 巡る魂が、こんなにも近くであり そして似たような奴だなんて本人が知ればどう思うか 『 ルイスは、強さと優しさを持った勇敢な騎士だったよ…… 』 誰、とは言わず思い出を浸るように言えば 彼は聞くだけ聞いてから、溜め息を吐いた 「 はぁー、やっぱなし! 」 『 ん? 』 「 俺って結構嫉妬深いから。ロルフが前の主の事をよく言うとムカムカする! 」 ルイスもまた、俺を気に入ってくれていた 大切だと笑った彼の言葉を思い出せば笑みは零れ どちらともなく向き合い、ニコッと笑ったファルクの頬へと触れていた 「 ん、ロルフ? 」 『 俺は……"御前"が好きだよ 』 幾度と無く此れからも巡る魂、それでもまた俺を呼んで嫌うことがあっても愛してくれるのだろう 御前はそんな性格に思えると、頬を触りながら笑った俺に、ファルクは俯いた 「 いや、ちょっと待って…。今、なんか胸に刺さった…… 」 『 ファルクも雄だもんなー? 』 「 ロルフ!!? 」 これは只の、主へと向ける愛情表現 獣の姿と同じだと思えば良い 俺の服を掴み強く目を閉じたファルクの頬へと優しく口付けを落としていた 「 ふはっ……俺も好きだよ 」 照れたように笑っては御返しとばかりに頬へと返す口付けを受け入れれば、その身体を抱き締めていた 『 ファルク、死ぬ迄傍にいる…… 』 「 うん、ずっと傍にいて 」 俺は人ではなくなった今は聖獣 死を見とり、そして次の主を待つ また御前が呼ぶときは、もっと強くなれるといいな
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