もっともっと好きになる

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「お互い様……ですね。」 ぽつりと口にし、近づいてくる竜也さんの顔。 あたしの額へチュッと唇を落として、竜也さんはイスから立ち上がった。 「……さて、もう行かないと池内くんが来るころです。」 そう、今は朝。 こんな、いちゃいちゃするような時間じゃない。 「あっ、そうだ。カナコさん、ミーちゃんのことですが、一応高い所から落ちたことになっていますので、様子を観察するという目的での一泊二日の経過観察入院扱いです。でも、ハクくんからの情報もありましたし、トイレのあと辛そうな様子も見られましたので、膀胱炎の治療として抗生剤を朝、飲ませています。もし、ミーちゃんの様子が変だったり、調子が悪そうでしたら、遠慮なく僕のところへ連れて来てもらえませんか?」 いつの間に……って、あたしが寝てる間だよね。 「ん。わかった。」 あたしの返事に嬉しそうな極上の微笑みを竜也さんは浮かべると、くしゃりとあたしの頭を撫でて、名残惜しそうに手を離し、リビングの出入り口であるドアへ向かう。 「竜也さん、いってらっしゃい。」 頭を撫でられ、嬉しくて緩んだ顔もそのままに、あたしは竜也さんに軽く手を振った。 「はい、いってきます。」 極上の微笑みのまま手を振ってくれ、リビングを後にする竜也さん。 竜也さんの出て行ったリビングのドアをしばらく眺め、あたしはぽつりと呟いた。 「…しあわせだな…。」 好きな人を『いってらっしゃい』と見送れることの幸せ。 好きな人が『いってきます』と言ってくれる幸せ。 好きな人の側にいられるという幸せ。 ……こんなに幸せでいいのかな? 幸せの反動とかこない? ……考えすぎよね? あたしはリビングのドアから目を離し、ふと、リキとミーちゃんに目を向けると、今度は仲良く向かい合うように体を横たえてうつらうつら。
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