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鳩と猫と獣医さん
「だから、あそこのパン屋さんが今の所一番美味しいと思うのよ。」
あたしは公園のベンチに腰かけて、コンビニで購入した食パンをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……
『そうよねぇ。確かにあそこの食パンって、すごくおいしいのよね。ついもらえないかなって店のまわりをうろうろしちゃう。』
投げたパンをつつく鳩さん達の中から、一匹の鳩さんがあたしの隣にやってきた。
灰色と白の斑。
ごくごく一般的な普通の鳩さん。
「うろうろしたら、もらえちゃうものなの?」
『時々ね。カナコ、もうそろそろ仕事とやらに行かなくていいの?その格好、仕事よね?』
ひょこっと首を傾げる鳩さん。
その姿は少々愛らしい。
ちなみに今のあたしの姿は、職場から支給されてる制服。
膝丈の無地で地味なグレーのタイトスカートに、シンプルな白いブラウス。
パンプスは自前だが、無難に黒の上品そうに見えるものを履いている。
長い栗色の髪はちょちょいと後ろにひとまとめ。
職場に到着したら、バックにしまってある青が鮮やかなスカーフを首に巻き、スカートと同じ色をベースにした千鳥柄のベストを着て、あっという間に受付嬢へ早変わり。
「今日はね、遅番なの。もう少しゆっくりできるんだ。」
あたしは腕時計をちらりと確認。
只今の時刻、七時三十分。
今日仕事は九時半からのため、だらだらと散歩しつつ、みんなと井戸端会議でもしようと思って公園にやってきた。
季節は秋。
残暑も過ぎて、少し肌寒さが感じられるようになった十月中旬。
朝の澄んだ空気はすごく好き。
かれこれ六時半頃からベンチでだらだらと井戸端会議を開催している。
……目の前の鳩さん達と。
『ほんとカナコと仲良くなれてよかったわ。あそこのコンビニとやらのパン、食べてみたかったのよ。』
目がきらっきらと輝いている。
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