眠れぬ夜はきみのせい。

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それは、季節外れの台風が上陸した夜のことだった。 「…うん、…わかった、気をつけてね。こっちは大丈夫だから。…うん、ありがとう。」 理沙さんが、電話を切った後に小さくため息を吐く。 「智之さん?」 「そう。新幹線ももちろんストップだから今日は近くにホテル探して泊まるって。」 尋ねた大和に理沙さんが答えた。 今日は出張で遠方に出ていた父は、ついに帰宅できなくなったようだ。 「今からこの辺も雨風強くなるだろうから、停電とかなっちゃう前に早く寝なさいよー。」 時計の針は22時を過ぎたところ。 予報では北上してくる台風は、深夜に僕たちが住む地域を通りすぎるらしい。 「一応懐中電灯2つ出してあるから、それぞれの部屋に持っていってね。後は水もあるし、携帯の充電もOKだし…。」 こんなときの理沙さんほど頼もしいものはない。 一方、大和は読んでいた漫画を持ったままふわぁ…と大きな欠伸をしていた。 外は雨が降っていて、少しずつ雨も風も強くなっている気がした。
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