将軍の凱旋

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 ユリアの父、ローマ軍の名将マルクス・ユリウス・エウティケスは、海の戦いも陸の戦いも得意としていた。近年の帝国の領土拡大は全てエウティケス将軍の軍師たる功績を表していた。  街の外れに堂々と建立する凱旋門の方角から大きな歓声が上がった。  騎馬兵の列が街へと入ってくるのが見えた。  我先にと押し寄せる人の波を縫い、兵は隊列を崩す事なく行進を続ける。ローマに戦勝をもたらした彼らは馬に跨り誇らしげに胸を張っていた。  眩しい甲冑姿の列の真ん中に、一際目立つ金の鎧を纏い、真っ赤なマントをはためかせる男の姿があった。 「お父様!」  遠目でも分かる。
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