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〇
数日ぶりに立ち寄ったその森は、いつにも増して寂しい場所に思えた。
鬱蒼と生い茂る高い木々。
その隙間から、ぽたぽたと雨粒が落ちてくる。
梅雨空の下で、人知れず『OPEN』の文字を掲げているカフェ。
その外観はボロボロで、とても営業中のものだとは思えない。
人を寄せ付けない、孤独なカフェ。
それはまるで、まもりさんを閉じ込める檻のようでもあった。
「……まもりさん、いますか?」
わずかに躊躇してから、私はその門扉を叩いた。
入り口を開けると、いらっしゃいませ、と、奥からあの穏やかな声が聞こえてくる。
「やあ、絵馬ちゃん。来てくれたんだね」
照明のないその部屋の奥に、まもりさんがいた。
いつもと変わらない、優しい笑顔。
店の壁や床は相変わらず汚れているけれど、キッチン周りだけは少しだけ綺麗になった気がする。
流星さんのおかげだろうか。
「まもりさん、お久しぶりです。お身体の方はどうですか?」
「うん。おかげさまで、すっかり良くなったよ。あのときはありがとうね」
まるで先日のことが嘘みたいに、彼は元気な様子を見せてくれた。
「あ、そうそう。ちょうど今、新作のケーキが出来たところなんだ」
よかったら味見して、と言われて、私はここに来たことをちょっとだけ後悔した。
と同時に、心の内で流星さんを呪う。
予想通りの壮絶な甘味を堪能した後、私は持参した水筒のお茶で喉を潤した。
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