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どんな説明をしたらいいか全く見当もつかないが、とりあえず、ここで逃げてはいけないような気がする。だがアンは聞く耳を持たなかった。
「説明して分かる人ならとっくに説明してます。あの分からず屋が理解するまで付き合ってたら一生ニューヨークに帰れませんよ。逃げるが勝ちです」
悪態をつくアンの横に父親が並ぶ。父親も歩くのがめちゃくちゃ速かった。
「アン、聞こえてるからな!ケイ、君だって父親だろう!将来、自分の息子が悪い女に弄ばれていたらどんな気持ちになるか想像してみろ!」
千春はまだ生後4ヶ月だ。そんな未来を想像しろというのは無茶な話だったが、我が子を思う父親の気持ちは多少なりとも理解できる。俺は足を止めざるを得なかった。
「タイラーさん、どう言ったらいいか分かりませんが、俺はアンを弄んでいるつもりはありません」
俺はアンの手をそっと解き、離着陸情報の電光掲示板の前で立ち止まった。俺はアンの父親と向き合い、彼を真っ直ぐに見つめた。彼は怒りと緊張が入り混じった顔で追及した。
「じゃあ、君はアンを愛してるのか?」
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