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気が付いたら、墓の中
冷気と埃っぽさ、すえた匂いで目が覚めた。
耳の中に水が入ったような感じがする。喉と胃が熱い。
手を伸ばすと硬い感触があり、新しい木の匂いがして、思い出した。
私の名は莉莉という。家の裏で賊にさらわれ、豪商に妾として売られた。だが豪商は私に会う前に死に、私は殉葬されることになった。つまり、道連れで死ぬことになった。覚えているのは、押さえつけられて甘くて苦い杯を煽ったところまで。
先ほどからのすえた匂いは薬をはき戻して息を吹き返したからだろう。喉の奥がヒリヒリと痛む。
目覚めなければよかったのに。
意識を失う直前の覚悟を返せ。墓の中で生き返っても死を待つばかり。踏んだり蹴ったりだ。副葬された刀剣でも探して、喉を貫き墓を汚してやろうか。そんなことを考えたせいか、少し離れたところから声がした。
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