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「……これでよし、と」
19時。窓の外はもう真っ暗だ。
大きな本棚の最後のスペースに今日読み終えた二冊の本を収めて『図書委員おすすめコーナー』は完成した。
「こう見ると感慨深いよね」
「ほんとにな」
水守はぽんぽんと本棚の側面を優しく叩く。
半年かけて集めた、僕と彼女の好きなものが詰まった宝箱だ。
「これで、完成か……」
僕は嬉しいような寂しいような気持ちで呟く。
お気に入りの物語が終わってしまった時の喪失感のような。
しかし返ってきた言葉は予想外の言葉だった。
「それが、まだ完成じゃないのよね」
「え?」
僕は思わず訊き返す。
「厳密にいえば、完成にはしたくないの。これを完成としてしまえば、先生はまた何か新しい企画を持ってくるかもしれない。前にも言ったけど、新しいことをはじめるのはエネルギーがいるの。できるだけ現状を維持するのが一番効率がいいのよ」
真っ直ぐに黒い瞳を僕に向けて、捲し立てるように彼女は言った。
「……なるほど。それは一理ある」
「でしょ。だからこれからも継続して、このコーナーを更新していくという流れに持っていきたいの。協力してくれる?」
そんなの、僕にとっては願ってもない話だ。
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