4.お醤油も甘い

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 彼のハッとした顔。見開いた目、あっと開けたままの口。そして、次から次へとお醤油をかけ始める。  美鈴と宗佑も顔を見合わせ、ほっとする。黙々と食べてくれる彼を見ていると、なんだか優しい気持ちになってくる。  反社会的な男性かもしれないのに。食べる時はどこか優しくて、真摯な眼差しと誠実な横顔……。渋い声と落ち着いた物腰はとても大人で安心感がある。なのに、刺青と傷跡……。  ほんとうにどのような人なのだろう? お客様それぞれ、気にすることもなかったのに。こんなにあの人を気にするなんて。  痛い恋をして痛い別れをしたばかり。男性に惹かれても、だからって飛び込むなんて思いきった気持ちは湧かない。ましてや、ヤクザだった場合どうすればいい?  彼はお客様。どのような人であれ、良きお客様。それだけでいい。    ―◆・◆・◆・◆・◆―    ディナーの時間になると、若い女性客とカップルが多くなる。  昼間にゆったりランチを取る層とはまた違うお客様で賑わう。  本日のディナーメニューは『赤ワインをつかった大人のハッシュドビーフ』。
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