14.妻がいない婿殿だから

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「え、でも……」 「カナ、おまえもお母さんがいる間は、俺んとこにいろ。お母さんといろいろ話してみろ。甥っ子もおまえにわざわざ会いに来てくれたんだろう。うちなら部屋はあまっているから構わない。そのかわり、夕飯頼む。お母さんと一緒に買い物に行ってこい」  カナが断る前に、親方は背を向けロッジに戻ってしまった。    ―◆・◆・◆・◆・◆―    母と夕食をつくることになった。親方の車を借りて、村のスーパーまで、母と航と出掛ける。  湖畔を走ると二人の目が湖と富士山に釘付けになる。  スーパーに行っても、航は始終ご機嫌で無邪気に元気いっぱいだった。  富士山を見てはスゲー、湖を見てはスゲー、夕の茜に染まる薔薇色の雪富士を見た母と航は感動して、寒い中ずっと見つめていた。  母と久しぶりに一緒にキッチンに立って夕食を作った。親方と母と航と四人で暖かい食卓を囲み、富士の夜が更けていく。  航は疲れたのか、親方が準備した部屋ですぐに眠ってしまった。 「先に休みます。お母さん、ごゆっくり」  夕食の片づけが終わると、ひとり晩酌をしていた親方は一階奥の自室へと消えていった。
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