1.あなたのそういうところが嫌いです。

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1.あなたのそういうところが嫌いです。

「宝条主任、確認お願いします。」 「はい。」 宝条翠咲(ほうじょうみさき)は、保険会社の『査定』と呼ばれる支払いを担当する部門で仕事をしている。 セミロングの髪はきちんと手入れされており、濃い茶色の髪と同じく、濃い茶色の瞳の持ち主で、ぱっと見た感じ事務を担当しているOL、と言った感じだけれど、翠咲は役職付きの主任という立場だ。 保険会社の支払、というと、ハードな交渉を想像されることも多いが、翠咲が仕事しているのは、傷害査定と呼ばれる部署で、ケガによる支払いを専門としている部署なのだ。 自動車保険の担当部署のように、一刻を争うことは少ないので、他の部署よりは、ややまったりとしているのではないだろうか。 翠咲自身は入社の時に、最初は火新と呼ばれる火災新種と呼ばれる部署に配属になった。 これは文字の如く、火災や他には賠償責任関連のお支払いをする部署である。 火災は火事の時だけ対応するのかと思うが、そうではなくて、例えば、台風の時などは自宅の浸水や、家財の破損、場合によっては、カーポートの屋根が飛んだ、等の事案にも対応する。 そのため、今でも台風の発生には敏感になってしまう翠咲なのだ。 簡易な案件については、スタッフと呼ばれる派遣社員で支払いをしてくれる。 けれど社員である翠咲が対応するのは、支払いに納得いかないとか、揉めた挙句にこじれた案件とか、非該当で上申が必要とか、そんな、案件としては少し手が掛かるケースだ。
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