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「水曜日、諸橋さんのお見舞いに彼も同行すると言ってる」
「彼? 旦那ってこと? え、まさかそれって……不倫がバレた?」
急展開に顔色が変わる。
「相手がユウトくんであることは言わない。心配しないで」
「そ、そういう心配をしたんじゃない! 俺なんかのことはどうでもいい。橘さんは旦那さんに怒られたりしなかったのかって!」
立ち上がるユウトくんにわたしは一歩後ずさる。この距離でもユウトくんが本気でわたしを案じてくれているのが伝わってきた。だからこそ言おう、覚悟が固まっていく。
「お見舞いをした後、夫婦で病院に行く予定があるの」
「病院?」
「子供を授かりやすくする治療をするんだ」
ユウトくんの表情が固まり、強烈な怒りをぶつけられると身構えるも、少し間を置いた次の言葉は意外に静かで、低く、地面を這ってわたしへ巻き付く。
「……待てよ、意味がわからない。なんで不倫がバレて子供を作ろうとする訳? そんなのおかしいだろ?」
わたしの説明に嘘はない。ただし矛盾はある。ユウトくんは必死に矛盾を指摘してきた。
「そうだね、おかしいよね」
「橘さんは納得してるんだ? 不倫した側だから旦那さんに逆らえないんじゃなくて?」
「逆らうとか逆らわないとかじゃないよ、2人で決めた」
「旦那さんは怒らなかったの? 一度きりなら許すって?」
「ごめん、後は夫婦の問題。答えたくない」
「橘さんは旦那さんとの間に子供が欲しいの?」
「だから夫婦関係の問題だってば!」
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