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プロローグ
「いいか、誰になんと言われようとお前は俺のものだ。初めてお前に会った時から決めてたんだよ、絶対に手に入れるって」
やけに眼をギラつかせて、奴は俺の顔を覗き込んだ。壁に抑えつけられており、身動きが取れない。
突然の状況に困惑し、自分の吐息が震えているのが分かった。
「っ、何様なんだよ! 俺は誰のものでもない。この身体が一生遊佐家に縛り付けられるなら、心だけは俺だけのものだ!」
「…ガキの頃からお前はそうだったな。優等生で、我慢強くて、意地っ張りで。誰の助けも求めない」
「だったらなんだって言うんだよ」
すると俺の強がりを見抜くように、奴はクッと喉で笑った。
「そんなお前を見てて俺がいつもどう思ってたか知ってるか?」
奴の唇が徐々に近づいてくる。
「堪らなく可愛いって思ってた。怖いくせに必死に強がって震えるウサギみたいに見えてた。その強がりをぶっ壊したら、お前は俺の胸に縋るのだろうかって考えてたよ」
「っは……」
「なぁ…」
ダメだ。
今まで必死に守ってきたものが、崩壊し始める音が聞こえた。やめろ、これ以上は…。
だが無慈悲にも、とどめの一撃を指したのはやはり奴だった。
低く、魅惑的な声が俺の鼓膜をくすぐる。
「壊れちまえよ」
その瞬間、俺の吐息は奴の唇に飲み込まれた。
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