10.僕が君の指になる -真人-

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「あっ、お帰り。 真人。こんばんは、多久馬先生」 「あらあらっ。 院長先生、いつも冬生がお世話になっています。 よかったら、あがっていってくださいね」   そういって、優しく迎え入れる檜野家に、 父は運転手に、少し立ち寄る旨を告げて車を降りる。 父の車は何処かへと移動すると、 いつの間にか手にしていた手土産を檜野家へと渡していた。 「真人、制服を着替えたらプレイエルの前へ集合」 瞳矢はそう言うと、自分の部屋へと着替えに戻る。 僕も自室へと戻って服を着替えると、 リビングと繋がっている瞳矢のプレイエルの部屋へと戻った。 ドアを開けっぱなしにしているので、 プレイエルの音色が家中に広がっていた。 階下では、瞳矢の左手が、軽やかに鍵盤の上を走っていた。 慌てて、瞳矢のもとへと行く。 「瞳矢っ、それって?」 「どうかなー、 ちょっとまだ難しくて完璧には出来ないんだけど、 オーケストラパートを左手だけで演奏してみたんだ。 超絶が得意な真人なら、 もっと動かしやすい方法、知らない?」 そういいながら、瞳矢は楽しそうにプレイエルと向き合う。 「真人がボクの指になってよ」
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