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「あっ、お帰り。
真人。こんばんは、多久馬先生」
「あらあらっ。
院長先生、いつも冬生がお世話になっています。
よかったら、あがっていってくださいね」
そういって、優しく迎え入れる檜野家に、
父は運転手に、少し立ち寄る旨を告げて車を降りる。
父の車は何処かへと移動すると、
いつの間にか手にしていた手土産を檜野家へと渡していた。
「真人、制服を着替えたらプレイエルの前へ集合」
瞳矢はそう言うと、自分の部屋へと着替えに戻る。
僕も自室へと戻って服を着替えると、
リビングと繋がっている瞳矢のプレイエルの部屋へと戻った。
ドアを開けっぱなしにしているので、
プレイエルの音色が家中に広がっていた。
階下では、瞳矢の左手が、軽やかに鍵盤の上を走っていた。
慌てて、瞳矢のもとへと行く。
「瞳矢っ、それって?」
「どうかなー、
ちょっとまだ難しくて完璧には出来ないんだけど、
オーケストラパートを左手だけで演奏してみたんだ。
超絶が得意な真人なら、
もっと動かしやすい方法、知らない?」
そういいながら、瞳矢は楽しそうにプレイエルと向き合う。
「真人がボクの指になってよ」
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