人材育成、はじめました。

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◆ もう何十年前だろう。 魔の国の奴隷人間として生まれた。 肉体労働を強いられる俺たちの中には、俺らを監視する魔物より強い者もいた。だけど、決して彼らは魔物に逆らわない。 俺は納得できずに逃げ出した。 力がものをいう魔の国で、鍛えてはギリギリ勝てそうな相手を狙って戦い、そこそこのランクまで這い上がった。 そこで戦闘狂の魔王と会った。 遥かに強い魔王に対し、俺は決して戦いを挑まず、いつだって俺が勝てる相手を選び、殺さずに負かした。 魔王は驚いていた。 どうやって殺さずに倒せるのか、と。 魔王は手加減のできない奴だった。 いや、相手の力量を測れない様子で、むしろ俺は相手の力を測る能力に優れていたらしい。 戦闘狂の魔王は自分と対等に戦える者を探していた。 魔の国最強の魔王と対等なものなんていない。 いないなら育ててくれと、魔王に頼まれた。 魔物の中には、もう魔王とやり合おうとする物はいないから、立ち向かってくる人々の中から見込みのありそうな者を育てる事にした。 育てると言っても、向かってくる彼らの弱点を突くようにして倒すだけ。 それで、何度も立ち向かってくる彼らが、俺より強くなれば、彼らにちょうど良い魔物と戦わせる。 魔王と対等になって、初めて魔王と戦わせた。 戦いの中で死ねた魔王は、きっと幸せだっただろう。 そして、気づけば今、俺は育てた勇者一行の頼みで、また誰かを育ててる。
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