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<魔王が死んだ>
噂好きの妖精たちが煩く騒ぎ立てる。
きっと人の国まで、もうこの噂は届いているだろう。
さて、今後の魔の国と人の国の関係はどうなるのか?
面倒な疑問のせいで出る欠伸を噛み殺し、ガタンガタンと台車を引いてひた歩く。
魔王が死んでから約2日。
もうすぐ国境となるこの森を抜ける。
「ん、う〜ん……」
台車から聞こえる呻き声。
俺の計算通りなら彼らももうすぐ起きる頃だ。
森を抜けると、遠くの方に人影が見え、そいつは奥の村の方に一旦消えたが、その後わらわらと人がやってきた。
「お前は誰だ?」
「よく魔の森から出てきたな」
「魔王が死んだというのは本当なのか?」
それぞれが騒ぎ立てるので、どれに言葉を返すか迷う。言葉を返すのも面倒になって、思わず欠伸が出る。
そんな俺を人々は怪しそうに眺めて、そして台車の上の荷物に目を向けた。
「彼らは、勇者様方ではないか!」
「勇者御一行だと!?」
村人たちが一際騒ぎ出すので、台車の上の勇者とその仲間たち三人も目を覚ます。
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