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あんなにスミレさんに夢中になっていたのに
結婚しているとわかっていても手に入れたいと思っていた人なのに
別れてからすぐに他の人に気持ちが移るなんて
「.....バカみたいだ」
罪悪感と優越感の狭間で続けていた関係に縋り付いていた自分を思い出すと大声で叫びたくなる
スミレさんの言葉だけが全てだったあの頃の俺に戻りたい
目を覚ませって殴ってやりたいとさえ思う
そうしたら.....
「好きだって言える日がいつかは来たのかな....」
「泰生、ちゃんと飯食ってる?」
大学で仲の良いメンバーの1人に声を掛けられた
「飯より寝たい.....」
大学が終わってダッシュで電車に乗り、バイト先に向かい終わるのは日付が変わった後だ
それから着替えて家に帰れば睡魔に襲われてそのまま寝るか、1度仮眠を取って風呂に入ってまた寝るという生活が2週間続いている
「引っ越したの何で?」
「あー......色々あってさぁ......」
「泰生さぁ、女の子の家で暮らしてなかった?」
「!」
誰にも芹さんと暮らしてる話はしなかった
知り合いの家と誤魔化していたはずなのに
「やっぱりなー!シャンプーの匂いでわかった!」
「そんなわかりやすかった....?」
「俺さ鼻が効くから」
「えっ、犬?」
気づけば思ったことが口から出てしまっていた
睨まれた.....
「犬並みではない」
「それは残念だね」
落ちそうな瞼を必死に開けようと頑張る
「彼女....?」
「違うよ」
はっきりと否定したけど納得いかないような顔をする
「前に看病してくれた人」
「あー!名前なんだっけ?何か言ってたよな」
「名前はもう教えない」
「ケチ!その人と上手くいかなかったのか?」
「上手くいってたよ。ちゃんと真面目にルームシェア出来てた」
「だったら何で」
俺は机に頭を伏せた
「もう出来る自信がなかったんだよ」
そして目を閉じた
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