2-2 桂木②

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「水のカルキ抜きをしないこと、餌をやってしまうこと、そして最後の一つはエアーの問題だろうな」 「エアー?」 「魚も呼吸している訳だからね。水中の酸素濃度が低下したら、呼吸困難になるのは当然だ」  それは理科の授業か何かで聞いたことがある。 「よく金魚鉢に金魚を入れているだろう? あんな小さな入れ物にエアー無しの状態で泳がせていたら、丸一日と持たない」 「なるほど……というか、エアーって何なんだ?」  桂木は呆れたような表情になる。 「まったく君は何も知らないんだな……。水槽の中で空気を出しているやつを見たことが無いか?」 「何かぶくぶく言ってるやつだっけ……」  欧介はうろ覚えの記憶を呼び出そうとした。 「そう。それをすることによって、水中に酸素が溶け出す。中学生でもわかる話だ」 「うっ……ま、まあ俺を含めて、そのぶくぶくを入れる事を知らない人間が大勢いるってわけか」 「エアーの問題は他の方法で解決することも出来るし、水の濾過やら温度の問題やら細かいことを言うとキリが無いんだが、大まかな失敗の理由としては以上の三つが主だろうな」 「はあ……金魚一つで結構面倒なものなんだな」  欧介にはとてもできそうに無い。聞いた桂木はやれやれと肩をすくめた。 「面倒なものか。最初の一週間少し気を遣えば良いだけの話だろう。うまく飼えば10年は生きるんだ。その程度の労も惜しむのなら、金魚すくいなんてしなければいい」  それもそうである。欧介は今後絶対に金魚すくいはしないでおこうと、心に決めた。
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