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僕は写真を見て唖然とした。
「え?」
間の抜けた声が部屋に響く。
まじまじと見た写真には今とまったく変わらない麻衣子の姿がある。
処置理由を見ると『シミ取り・1ヶ所』と記載されていた。
シミ取りだけ……隠したつもりは妻にないだろう。隠しごとという程度でもない。
「ありがとうございました」
僕はすぐに美容整形外科を出た。
再び産婦人科に戻る。
こうなったら思い付く限りの不安要素を払拭しよう。そして疑いのない真っ白な心で3人の人生を歩もう。
産婦人科に戻った理由はただひとつ。
妊娠した時期を知るため。
先ほど来たときは引渡しの間違いを確認することで頭がいっぱいで、意識すらしなかった。
看護士の話では受精してから280日して出産するということだった。排卵日や生理不順などの理由で前後すると説明があったが、いくら計算しても思い当たる節はない。
子作りを何ヵ月も頑張ったが、なかなか授かることはできなかった。妊娠したタイミングは1度焦りを無くすために心を休めようと子作りを休んでいた時期。
記憶に間違いはない。
これが本当の隠しごとだったか……
僕の子供ではないことが、はっきりとした瞬間だった。
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