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マナムスメ
待ちわびた産声が分娩室に響いた。
初めて発する声なのに、力強い泣き声を出している。
立ち合ってよかった。
感動という言葉では物足りない喜びが僕を包んだ。
繋いだ妻の手は汗ばんでいた。当然だろう。つい数分までは、これ以上にない力で僕の手を握っていたのだから。
妻は涙を流して笑っていた。温かい優しい表情はこれまでのどんな笑顔より愛しく想えた。
僕は手を繋いで励ますぐらいしかできない男の無力さを痛感しながらも「産まれた、産まれたよ。麻衣子、ありがとう。ありがとう」同じ言葉を連呼した。
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにするなんて、人生で初めてだった。
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